完成された美より、未完成を尊ぶという美学
- 勝田 静佳

- 3 日前
- 読了時間: 3分
―― 香りは、使う人の中で完成する
「ちゃんとしなきゃ」
「整っていなきゃ」
「綺麗に仕上げなきゃ」
私たちはいつの間にか、
完成していること=価値
だと教えられてきました。
でも、香りをつくる仕事を続けるなかで、
私は何度も立ち止まります。
—— 本当に、完成は必要なのでしょうか。
余白があるから、心は呼吸できる
フランスのルーブル美術館を、想像してみてください。
完璧に整えられた空間は、たしかに美しい。
けれど、どこか息が詰まる。
一方で、
少し歪んだ器
言葉にならない沈黙
香りがふっと消えていく余韻

侘び寂び。
そこには、人が入り込める余白があります。
余白があるから、
感情が流れ込み、
記憶が重なり、
その人だけの意味が生まれる。
完璧な人がいないのと同じで、
欠けこそが人間味であり、美しさ。
—— それは欠点ではなく、個性。
私はこの「未完成」を、
香りの中に残したいと思っています。
香りは「答え」ではなく「問い」
Chamomilla Nature の香りは、
「こう感じてください」とは言いません。
元気になってほしい。
癒されてほしい。
前向きになってほしい。
もちろん、そんな願いは込めています。
けれど、それを押しつけることはしない。
同じ香りでも、
ある人は「安心」を感じ
ある人は「懐かしさ」を感じ
ある人は「少し切なさ」を感じる
それでいい。
それがいい。
香りは、使う人の内側で
その人の人生や感情と出会い、
その人だけの答えに育っていくものだから。
未完成であることは、弱さじゃない
「未完成」という言葉には、
どこか「足りない」「未熟」という響きがあるかもしれません。
でも私は、こう思っています。
未完成であることは、
変化できる余地があるということ。
香りの記憶が人それぞれ違うように、
香りから受ける影響を作り手が定めることはできません。
揺らぐ心に合わせて、感じ方が変わる香り。
昨日とは違う今日の自分が、
違う受け取り方をする余白。
それは、とても人間的で、
とても誠実な在り方だと思うのです。
香りは、あなたの中で完成する
香りをまとった瞬間が、ゴールではありません。
朝なのか、夜なのか。
元気な日なのか、弱っている日なのか。
誰と過ごした一日だったのか。
そのすべてが重なって、
香りは静かに姿を変えていく。
だから私は、
「完成された香り」を差し出したいのではなく、
あなたが完成させていく香りを届けたい。
問いのまま。
余白のまま。
揺らぎを抱えたまま。
それでも大丈夫だと、
そっと思い出せるような香りを。
完成していなくていい。
整っていなくていい。
香りは、
今日のあなたに触れたその瞬間から、
静かに完成へ向かいはじめるのだから。
—— その過程ごと、愛せますように。



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